福井コンシェルジュ〜私たちが福井をご案内します〜

津田寛治の「KANJIて福井」

ショッピングモールになくて駅前にあるもの。

 「ショッピングモールにあって駅前に無いものは何か……。あ、じゃなくて駅前にあってショッピングモールに無いものは何か。いや、別にショッピングモールに嫌な思い出があって目の敵にしているとかではないんですよ。ショッピングモール嫌いじゃないし。ようは古いものにあって新しいものにないものはなにかっていうことなんですけど、それは思い出だと思うんですよね。それも深い思い出。昨日今日のエピソードなんかじゃないんですよ。幼い頃から自分と一緒に育ってきて、もう、少年時代から青春時代から大人になってからもの無数の記憶が刻み込まれて、とても一言では語り尽くせないような場所。思い出の集大成のような場所。駅前なんかはまさにそうなんじゃないですかね。少なくとも僕にとって福井駅前はそういう場所なんですよ。例えば、この先に見えてるコンビニ。あれ、昔は本屋だったんですよ、ひまわり書店っていう。あそこなんかはね、もう子供の頃から何百冊って立ち読みしましたよ漫画から小説から。あ、たまには買いましたけどね、付録の付いてるやつとかは、ロードショーとかは。いつもクラシックがかかっててね。クラシックをBGMに幾つもの物語にトリップしましたよ。『あしたのジョー』なんかも全巻立ち読みしましたしね。だから僕にとってのひまわり書店は物語のルツボなんです。まるで自分自身がリングで戦ったり、激しい恋愛をしたかのような疑似体験の思い出が山ほど詰まった場所だったんです。あ、映画館なんかもそんな場所のひとつですね。テアトル福井とか東映パラスとか放送会館とか。あ、あとピカデリー!あったんですよ福井にもピカデリーが西武のあたりに。何を隠そう、あそこで観た『がんばれベアーズ』は僕が生まれて初めて観た映画なんですよ。小4ぐらいだったかなあ…いや、もちろんその前にガメラだのゴジラだのは観てましたよ。でも、自分の意思で映画館に行って一生懸命字幕を追いながら観た映画は『がんばれベアーズ』が初めてだったんです。僕が、本当に映画を観るという行動を起こしたのはあれが最初なんです。いい映画だったですよ『がんばれベアーズ』。あ、最近観なおしたんですけど、今観るとかなりギリギリな映画なんですよね。子供たちがえらい不良というか、ビールもタバコも何でもオッケーな感じで。今だったらR15ぐらいになっちゃうんじゃないかっていう。昔は、ああいうのも平気で子供に観せてたんですよね。いい時代というかザックリした時代というか。…で、何が言いたいかっていうと、そういう思い出にまみれた駅前の感じは、そこで生まれ育った人にしか分かんないってことなんですよ。外から来た人が福井の駅前歩いても、そういった刹那感は感じないですよね。どこにでもある街にしか見えないと思うんですよ、あーここもドーナツ化が進んでるのね、みたいな」。 (つづく)

平成元年の元町(現在のガレリア元町)での夏祭り風景。
(所有者:バッグランドきもと)

昭和60年、新栄商店街にて。アーケード天井よりつりさがった色鮮やかなポスターは、ワールドインポートポスター展として企画されたもの。
(所有者:JACK)