熊川宿をまるっと満喫!川のせせらぎを聴きながら贅沢な時間を過ごす旅のすすめ
かつて若狭から京都を結ぶ重要な宿場だった熊川宿。伝統と共存する人々の暮らしの場所を根底にしながら、近年はその景観や暮らしに魅せられた人たちが古民家をリノベーションしたカフェや宿をオープンし、古くて新しい観光スポットとして再び注目が集まっています。今回は、そんな熊川宿を、歩いたりレンタサイクルを利用しながら紹介していきます!
※レンタサイクルは道の駅や資料館、菱屋などで案内しています。
戦国時代に誕生した熊川宿!宿場町の情緒あふれる町並みが特徴です。
福井県若狭町に位置する熊川宿は、豊臣秀吉に重用された浅野長政が天正17年(1589)に熊川を交通と軍事の重要な拠点と位置づけ、宿場町にしたことから始まります。江戸時代初期には物流の要所として問屋が発展し、米や、鉄、魚や塩など京へのさまざまな物資が流通していました。問屋や番所、奉行所跡やお蔵屋敷跡など当時の風情が色濃く残る街道沿いには、昔ながらの前川(まえがわ)と呼ばれる用水路が流れています。「真壁造」と「塗込造」の建物が混在する町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区として平成8年(1996)に選定。また平成27年(2015)には、熊川宿を含む鯖街道が「御食国若狭と鯖街道」として日本遺産に認定されました。
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「京は遠ても十八里」!都まで海産物を運んだ鯖街道の歴史
古代より若狭の海産物は奈良や京都の都まで運ばれていました。平城京跡から発見された木簡には若狭から都へさまざまな海産物を送ったことが示されており、御食国(みけつくに)として都との深い交流があったことが伺えます。18世紀後半から若狭の海で沢山の鯖が揚がるようになり、昭和半ごろより京都へ海産物を運ぶ道は「鯖街道」と呼ばれるようになりました。そして数ある「鯖街道」のなかで主要ルートであり最大の物流量を誇ったのが、小浜から熊川宿を通り、滋賀県の朽木村、京都の大原・八瀬を経て終点の出町まで続く「若狭街道」です。人々は重い海産物を「京は遠ても十八里」と言いながら運んだそう。昔の人たちはすごいなぁ~。
まずはここで熊川宿の基礎知識を学ぼう!「若狭鯖街道熊川宿資料館宿場館」
訪れたのは熊川宿の中間付近に位置する「若狭鯖街道熊川宿資料館宿場館」。レトロでモダンな近代洋風建築の建物は、もともと熊川村役場として使われていたもので、熊川出身である伊藤忠商事二代目社長の伊藤竹之助(いとうたけのすけ)が建てました。現在は鯖街道や熊川宿の歴史を学ぶ資料館として、資料や民具などを展示しています。熊川宿の歴史年表や、鯖街道を通って実際に海産物を歩いて運んでいる写真など、興味深い資料に思わず引き込まれます。当日は若狭熊川宿まちづくり特別委員会会長の宮本哲男さんに、熊川宿の町並みや暮らしの話も沢山お伺いしました!事前予約をすれば語り部の方が館内や熊川の歴史や見どころを一緒に歩いて説明するサービスもあるとのこと。歴史探訪したい方、必見です!
共生社会の構築を目指す美術館!「熊川宿若狭美術館」
資料館の向かいにある重厚な造りの建物は「熊川宿若狭美術館」です。江戸時代は地元でも大規模な商家であった髙島屋として、その後は銀行や酒蔵として利用されていた古民家を美術館に改修しました。子どもから障がい者までの美術活動支援を行ってきたNPO法人が運営するこの美術館では、主に障がい者アート、子ども美術、現代美術の作品を展示しています。様々な人が生き生きと暮らす社会を目指す地域に開かれた美術館として多くの企画展を年間を通して行っています。町歩きの道すがら、感性の柔らかな人たちのアート作品に出会ってみては。
旅の土産はここで決まり!道の駅「若狭熊川宿」と「鯖街道ミュージアム」
熊川宿を訪れたなら、地元ならではのお土産をチェックしたいところ。道の駅「若狭熊川宿」にも行ってみましょう!車やロードバイク、ツーリングで来た人たちからは、若狭エリアの玄関口として親しまれている道の駅です。鯖街道にある道の駅だけあって、鯖コーナーの充実っぷりに目を見張ります!熊川宿の美味しい水でつくられているこんにゃくや熊川葛など、熊川限定のお土産もおすすめ。また隣接する白壁・土蔵造りの「鯖街道ミュージアム」では、漫画やイラストで鯖街道の歴史を分かりやすく紹介しています。顔はめパネルで、鯖街道を歩いた昔の人になりきって楽しい旅の一枚を撮るのもよし!
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道の駅にポケットパーク「熊川トレイルゲートウェイ」オープン!
令和4年(2022)4月、道の駅「若狭熊川宿」に隣接したポケットパーク「熊川トレイルゲートウェイ」がオープンしました。ここは広場と駐車場が一体となったイベント開催のできるスペースです。熊川では「熊川トレイル構想」として、若狭町の熊川宿から熊川城跡を通り、河内川(こうちがわ)ダムを抜けて若狭駒ケ岳につながる全長11キロの森の中を歩く道(トレイル)の整備をしています。「熊川トレイルゲートウェイ」もその構想のひとつ。道の駅につづくデッキは木製で木のぬくもりを感じながら休憩できるスペースです。ここを起点に熊川の自然体験へ行けば、また新しい熊川の魅力を見つけることができるかも!
熊川宿に名水あり!前川のせせらぎが町歩きのBGM
熊川宿の歴史的景観に欠かせないのが、街道沿いを流れる前川(まえがわ)と呼ばれる生活用水路です。この水路は年間を通じて安定した水量を保ち、家の出入り口には石橋が架けられています。前川には「かわと」という石組みの洗い場が各所に設けられ、現在でも野菜を洗ったり、水の流れを利用して里芋の皮をむく芋車(いもぐるま)がかけられたりと、この土地特有の親水文化がみられます。毎年秋に行われる「熊川いっぷく時代村」の時には前川の流れを生かした「ブリキの金魚レース」や「ニジマスのつかみどり」などのイベントも!水の郷百選と平成の名水百選に選ばれたこの景観を、散歩やサイクリングで楽しみましょう。
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おいしさが素晴らしい名水部門第2位!「わかさ瓜割の水」
平成28年(2017)に環境省の認定する名水百選30周年記念として名水百選総選挙が行われました。若狭町の「わかさ瓜割の水」はその選挙でおいしさが素晴らしい名水部門で全国第2位に輝いています!「わかさ瓜割の水」は名水百選に選ばれている「瓜割の滝」の原水をそのまま使用。ミネラルが豊富に含まれる水はそのまま飲んでも、またコーヒーなどをいれるのにも適しています。道の駅や土産ショップなどでもお買い求めできますのでどうぞ一度ご賞味あれ。
熊川宿の新しいまちづくり拠点!街道シェアオフィス&スペース「菱屋」
熊川宿のほぼ中央に位置するのは、街道シェアオフィス&スペース「菱屋」です。ここはシェアオフィス、レンタルスペース、食文化体験スペース、カフェ、そして宿泊施設レセプションからなる複合施設です。前川に面する大きな店構えが印象的な菱屋は、かつて炭問屋を営んでいた古民家をリノベーション。この熊川を代表する問屋は「菱屋」と呼ばれています。ここを中心として、今新しい人たちによって、熊川宿の景観や資源を生かした新たなまちづくりが進められています。
思わず入りたくなるお店たち!古民家のリノベーションショップが続々誕生!
熊川宿を巡ると、古民家の雰囲気を生かした個性的なかわいいお店がたくさん並んでいます。給食カフェや、陶芸家のショップ、和カフェや忍者屋敷、アンティークショップなど多種多様なお店が街道沿いを彩ります。1日ゆっくり街道沿いをまわりながら、古民家ショップを巡っていくのも熊川宿の楽しみ方のひとつです。
宿場町に泊まろう!贅沢な時間を楽しむ古民家一棟貸し「八百熊川」
そして、熊川宿に滞在するならぜひ泊まりたいのが古民家宿「八百熊川(やおくまがわ)」!「八百熊川」では現在、熊川宿にある4棟の古民家をリノベーションし、1棟貸しの宿として案内しています。前川のせせらぎを真近に感じられる宿、中庭のデッキで一息付ける宿など、それぞれの宿に魅力が詰まっています。家族で泊まるもよし、親しい友人たちと泊まるもよし。宿泊すると見えてくる熊川宿の自然豊かな里山の魅力をたっぷりと満喫できます。先ほど紹介した「菱屋」でチェックインを受け付けているので、ここでスタッフの方から宿泊時のおすすめポイントや、レンタサイクルの案内など耳寄り情報もゲットできますよ。山間の静かな宿場町で感じる時間の流れに身をゆだねて、贅沢な時を過ごしてみては。
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泊まって食を堪能しよう!かまど利用や地元食材を味わう食体験
「八百熊川」に泊まったらぜひ食事も楽しんで!地元のお母さんたちが腕をふるう夕ご飯の熊川のおもてなし膳や、土鍋で炊く熊川葛の朝粥など、里山を五感で味わう食体験ができます。かまどを使った食文化体験も。御食国の美味しい海産物と、滋味あふれる里山の食材をかみしめれば、口福なひとときが訪れます。
一泊したら少し足をのばして!小浜や三方五湖を巡ろう。
朝の里山散歩を楽しんだら、もう少し足をのばして周辺の地域を巡るのはいかがでしょう。歴史好きな方は、鯖街道の起点である小浜で明通寺をはじめとした小浜の神社仏閣めぐり。若狭の自然を満喫したい方は、三方五湖を巡って海山里を存分に堪能してみては。ここは宿場町、熊川宿。かつて交通の拠点だったこの町から、福井の旅を楽しみましょう!