50年間の愛情が溶け込んだ牛すじ丼の至福
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中央卸市場の場外にある食堂街「鮮市場」で半世紀近くやられているもう一軒は「あらや」である。
厨房で孤軍奮闘する荒川とよこさんは、70歳だという。
名物は「牛すじ丼」である。
「牛すじ丼」には、たっぷりのネギと白菜漬け、具沢山の味噌汁が添えられて、心意気に富んでいる。
牛すじは、たにや食堂より大ぶりに切られ、ご飯を呼ぶ。
しこっ、グニュ、ブリッ。
大ぶりゆえに歯を喜ばせて、噛むたびにコーフンを呼ぶ
さああとは、真ん中に黄身を落とし、混ぜて混ぜて掻きこもう。
牛すじ煮の濃い甘辛味に黄身の甘みが溶け込んで、まろやかになった味がいい。
あとは七味をかけて少し引き締め、脇目も振らずに、一気呵成で食べ終えた。
味が濃いのに、しつこすぎない塩梅がちょうどいい。
「このレシピを公開したらいいのに」。
そいういうと、「店を辞めるまでは、教えません」
食べ終え腹をさすりながら、荒川さんの70歳には見えぬ肌艶に気づき、思わず聞いてみた。
「毎日牛すじのコラーゲンを食べているせいでしょうか」。
「いえ私は食べません」と、笑われた。コラーゲンのせいではない。
毎日お客さんのために「おいしくなれ。おいしくなれ」と念じながら炊いている心が、
きっとお若くさせているのだろう
お店の場所はこちら
あらや
〒910-0836
福井県福井市大和田1丁目101
(福井市中央卸売市場・ふくい鮮いちば)
TEL:0776-53-0688
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。