不思議メニューが多い喫茶店のへしこスパの実力。
どの街にもある、普通の駅前喫茶店である。
だが、メニューを見て驚いた。トースト類、サンドイッチ類,カレー,スパゲッティ、ライス類におつまみまで、62種類も用意されているではないか。
つまり全種目制覇するためには、2ヶ月かかるということである。
恐るべし「喫茶パイン」。
それも朝8時からやられ、すべてを1人で作られているのだった。
恐るべし「喫茶パイン」。
謎のメニューも多い。「ソーセージライス」、「ソース焼きそば」。
「焼きニシン寿司」。
「へしこスパゲッティ」
まずは、喫茶店のメニューとは思えない「焼きニシン寿司」を頼んでみた。朝イチ発酵郷土食である。
うむ、うまい。
焼いたことにより、味がたくましくなっている。
いきなり朝から燗酒が飲みたくなった。
次には珍しくないが、普通の料理も抑えようと「カツサンド」をお願いした。
ホットサンド方式で、薄いカツとキャベツが挟んでいる。
細かく木さんだキャベツがよく、カツ、パン、キャベツの一体感がいい。
そしていよいよ本命の「へしこスパゲッティ」を頼んでみた。
やはりここは福井だからなあ。
東京の人間には珍しいが、福井の人には日常である。
だが、へしこスパゲッティは日常ではないだろう。
運ばれてきた。
見た目は、「キャベツと唐辛子のトマトソース、海苔がけ」と言ったところか。
食べると、へしこはあまり感じない。
しかしスパゲッティを噛んで口から消えようとした瞬間,へしこが顔を出した。
これも燗酒が恋しい。
朝だけど頼んじゃおうかなという誘惑に悩まされる。
途中でチーズをかけると、これがいい。
つまり発酵と発酵が重なって、ぐんと上手くなるのであった。
しばらくすると、常連客がカウンターを埋めだが、当然ながらというか,皆パン系で,へしこスパゲッティを頼んでいる人はいなかった。
聞けば1980年開店だという。
もう40年以上やられているのですね。
ダンディなマスターと、へしこスパゲッティやニシン寿司とのミスマッチが忘れられず、「ソーセージライス」や他の料理も気になって仕方ない。こっりゃ、またきちゃうな。
朝一で新幹線に乗るときには、早めに宿を出て「喫茶パイン」に寄ってから、帰京しようと思う。
お店の場所はこちら
喫茶パイン
〒914-0054
福井県敦賀市白銀町1-15
TEL:0770-24-0958
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。