とんかつとそば、実は合うんですを発見の巻
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全国蕎麦屋に出かけ、今まで蕎麦は1万食以上食べただろう。
しかし初めてである。
せいろの上にカツが乗っている光景は、初めてである
敦賀でも「おろしそば」を食べようと入ったのだが、視線の片隅に違和感を感じたのである。
ふと他の客が、食べているのを見てしまった。かつが乗ったそばを食べているのを見てしまった。
食べてみたいという衝動が止まらない。「温かいカツと冷たい蕎麦が合うわけ無いだろ、やめとけ」
頭の中で囁く奴がいて、とりあえあずおろしそばと塩おろしそばを頼んでみた。
そばは二八と10割が用意されている。
そこでおろしそば10割を頼む。
おろしはあまり辛くないタイプで、かなりコシのあるそばがいい。
一方塩おろしそばの10割で頼む。
うむこれは醤油の香りがないぶん、よりそばの風味を感じるな。
鰹出汁がすっきりとして、これまたいい。
この二つですっかり気を良くして、かつそばも頼んでしまった。
蕎麦の上に薄いかつが乗っている。
傍らにはたっぷりおろしが入ったそばつゆが控えている。
まずは蕎麦をたぐる。
ずるるるっ。
次にカツを頬ぼる。
カリカリリ。
はっきり言って整合はしない。
整合はしないが、ずるるるっと、カリカリリの
食感の対比が面白い。
ずるるるっ、カリカリリ。
ずるるるっ、カリカリリ。
ずるるるっ、カリカリリ。
細かいドラムロールに
ギターカッティングが重なり合うような、軽快さがある。
このカツにソースがかかっていたら、合わなくなるだろう。
しかし何も味付けのない、素カツというのがいい。
ちょっとわびしい感じが、そばに寄り添う。
途中で、そばつゆにカツをドブンとつけてみた。
醤油味と旨味が加わって、カツは少しだけ背伸びをした。
でもそれより、カツの油と衣が溶け込んで、少し下品になったそばつゆが愛おしかった
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。