あんバタートースト他アイデア溢れる食事と飲み物で朝から人気の喫茶店。
街中ならわかる。
だが越前市郊外のロードサイドにある喫茶店に、朝からお客さんは来るのだろうか?
そう思いながら店に入ると、ほぼ満席だった。
店主は1人。
黒シャツをきっちりと着込んで、忙しそうに働いている。
厨房を見れば、オーブントースターが5台並んで、フル稼働しているではないか。
そう「とむ」は、バタートーストが名物なのであったコーヒーにも命をかけているようで「一豆入魂」、「一焼懸命」、「珈琲革命」などと、墨痕鮮やかに書かれた張り紙か、たくさん張り出されている。
まずはトースト類を頼もう。名物の「あんバタートースト」と、「ポテトハムトースト」と、「厚焼きたまごサンド」をお願いした。
中でも、「あんバタートースト」が人気のようで、来るお客さん、誰もが頼んでいる。
まずなによりトースト自体が美味しい。
均等に薄茶色の焦げがついて、香ばしいことこの上ない。
このトーストで、あんことバターをサンドしてある。
さらには片面だけに格子の切り目を入れて、食べやすくする心づかいも心憎い。
糖質と脂質の掛け合わせは、禁断の味である。
当然ながら美味しい。
朝から血糖値爆上がりの罪悪感が調味となって、さらに美味しい。
名古屋の似たトーストからヒントを得たのかと思ったが、35年前に自分で考えたのだという。
ご主人は、アイデアマンなのであった。
アイデア力は、他の食べ物や飲み物にも生かされている。
「ポテトハムトースト」は、ポテトサラダと刻んだハムを挟んだ厚切りトーストの上に
チーズが乗っていて、タバスコをかけてたべるピザ風でもある。
「たまごサンド」は、なんと厚焼き卵のサンドで、マヨネーズと合わせてある。
だし巻きや、厚焼き卵サンドというのが10数年前に東京で流行ったが、その遥か昔からここにはあったのである。
飲み物にも触れておこう。
ミックスジュースは、桃の優しい甘みが滲み出て、「ほうじ茶みたいな珈琲」は、
遠くにほうじ茶がいて、心が安らぐ感じ
基本のストロングも素晴らしい。
バランスよく、濃いがリラックスする。
コリャみなさん通うわな。
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。