眼前に人がる大海原を眺めながら、ゆっくりといただく昼ごはんの幸せ
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「わおっ」。
「おおっ」店内に入った瞬間に、一同が歓声を上げた。
目前には、240°雄大なぼぼ日本海が広がる空と海を見ながらの食事はいい。
心がおおらかになって、なにかおいしいものが、陽文になっていく手応えを感じる。
ずらりと並ぶ魅力的なメニューの中から、二つ選んで注文することにした。
まずは、魚の煮つけと刺身、フライが盛り合わされた定食「ばばがれいの煮つけ」である。
ばばがれいとは、なめたガレイの通称で知られる魚で、三国でもよく獲れ、元々は漁師が海水でさっと茹でていた料理だという。
醤油や砂糖を使わず、塩だけでさっと煮られたばばがれいの肉体に、ほのかな甘みを感じる。
ひたひたより少なめに水入れて、ギリギリまでに詰めるのだという
優しい甘みが際立つ。塩加減がほどよい毎日食べても飽きない味とは、おそらくこういうことである。
次は刺身と行ってみた。
カンパチ、イサキ、ヒラメの盛り合わせで、どれも質が高い。
脂がだれておらず、キリッとしまった肉体から、それぞれの甘みが滲み出て、
ご飯が進む。
海を見ながら、刺身を食べる目を閉じれば、魚が口の中で跳ねた。
たらとアジのフライも、魚の質がよく、いい。
「赤かれい煮つけ」が運ばれた。
箸を入れればホロリと崩れ、
ふんわりとししつとりと舌の上に広がっていく。
赤かれいの繊細な味を生かすあじつけもいい。
肉料理もお願いした肉じゃがである、
これはなんといっても、じゃがいもがおいしい。
ほっくりと甘いのである。
これだけ大きいのを選ぶのも、均一に火を通すのも大変であろうが見事な火の通しでジャガイモをいかしている。
雄大な海を見ながらの食事は、味覚をさえさせるのだろうか。
充実感が胸にひたひたと押し寄せるのであった。
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。