福井市で現代の名工の日本料理をいただく。
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市内の割烹「開花亭」へ向かった。
料理長の畑地さんは、最年少で現代の名工を受賞された方である。
畑地さんの手による季節を感じさせる料理が、次々と運ばれる。
秋の恵みが豆腐の優しい甘みの中で手を結んだ「柿としめじほうれん草の白和え」。
滋味深さに、充足のため息をつかせる
「すっぽんの茶碗蒸し」。
品おいい脂がみっちりと乗って唸る「鯖のお造り」。
ぐじの気品ある甘みとカブの穏やかな甘みが響き合う、「若狭ぐじの蕪蒸し」。
うなぎのたくましい甘みと爽やかなミョウガとの出会いがいい「鰻の印籠焼き」。
実は福井では、松葉蟹だけでなく、優れた毛ガニも漁れることを痛感させられる「身だし毛ガニ」。
甘辛いたれで焼き上げた「まぐろ鍬焼き」。
締めは珍しい「みずべこ出汁の煮麺」ときた。
ゼラチン質が多く、うまみがある深海魚みずべこ(みずべこは、福井県の呼び名で、ノロゲンゲ)で出汁をとった煮麺である。
そのしみじみと美味しい出汁の味わいを、たっぷりと堪能できる。
デザートは水羊羹とシャインマスカット大福である。
シャインマスカット大福も珍しいが、福井県といえば水羊羹である。
冬にだけ食べる菓子として定着しており、県内に50以上の水羊羹菓子舗があるのだという。
日本一水羊羹にうるさい県民である。
それだけにその水羊羹は、舌触りが滑らかで、甘味がほどよく、うっすらと豆の香りが鼻に抜けて、心地よく食事を締めくくるのだった。
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。