油揚げ王国福井の総本山で、巨大油揚げを頬張るの巻
大正14年から続く油揚げと豆腐の老舗、谷口屋にやってきた。
谷口屋は代々受け継がれた技術で作り続けている油揚げが
「竹田の油揚げ」として県民に愛されている。
パリッと香ばしい表皮の食感と内側の柔らかい食感の対比こそが。県民の心を惹きつけてきたのだろう。
細部にも様々な工夫と考えが施されている。
にがりは、福井県越前町の海から取れる越前にがりを、
雪の中で一冬寝かしてまろやかさを出したものが使われている。
大豆は厳選した国産大豆100%使う。
さらに揚げ油は、日本国内流通量0.2%の希少な国産菜種を圧搾製法で搾った北海道産の菜種油を使用しているのだという。
店内のメニューは、当然ながら、油揚,油揚,油揚づくしである。
代表する料理、「あげ一枚御膳」1650円をいただくことにした。
「おおっ」。
運ばれてきた瞬間一同声をあげる。
お揚げが巨大である。
おそらく福井の人以外、こんな大きなお揚げは見たことがなかろう。
写真を見ていただきたい。
大人の男性の手大、赤ちゃんの顔大の巨大油揚げが鎮座している。
その他も油揚げづくしで、豆腐大根おろし、油揚煮、油揚佃煮生姜風味、油揚炊き込みご飯がセットされていた。
この巨大油揚げは、豆腐一丁を菜種油で、なんと1時間も揚げるのだという。
歯を立てればカリッと外皮が破れ、中からふわふわの生地が現れる。
豆の優しい甘みが広がって、穏やかな気分になる。だがこれで優しすぎて、ご飯は進まない。
まず中の白い部分に塩をふるかけてみよう。すると、より豆の甘みが膨らんで顔が崩れてしまう。
醤油は上からかけてしまおう。
すると今度は燗酒が欲しくなる。
ご飯を食べるなら、
油揚の煮付け汁をかけて食べるのが一番いいことを発見した。
お次は「煮揚げうどん」をいってみた。
甘く煮たお揚げが、大きな丼一面を占拠している。
うどんは見えない。
大阪のきつねうどんを、油揚がでかいが、これに比べれば子供である。
箸で持ち上げようとすると、かなり重い。
指が疲れるほどである。
食べれば、中から甘辛い煮汁がどどっと溢れ出た。
これだけ分厚い揚げを中まで味を浸透させるのは,時間がかかるだろう。
そう思って尋ねると、一時間45分煮続けるのだという。
揚げの時間も考えれば、三時間近い。
食べ進むと、うどんつゆに煮汁が溶け込んで、甘みが深くなる。
コチュジャンや山ウニ,おろし生姜数えられが、入れても、辛味の向こうから甘みがやってくる。
うどんのしっかりしたコシと、お揚げのやわやわの対比が癖になる。
いずれもどこにもない油揚げ料理である。
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。