ナポリで学んだ哲学をも守りつつ、福井の食材を生かしたピッツァを生み出す唯一無二の職人は、素敵な笑顔で出迎えてくれたの巻。

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ナポリで学んだ哲学をも守りつつ、福井の食材を生かしたピッツァを生み出す唯一無二の職人は、素敵な笑顔で出迎えてくれたの巻。

今日本中に、数多くの美味しいピッツァの店がある。

本場ナポリと遜色のないピッツァがいただける。

こんな国は、日本だけだろう。

でももしこの「バードランド」の小田原さんがいなかったら、日本はこんなピッツァ大国になっただろうか。

そう思う。

小田原さんは、東京で音楽の仕事に関わり、アナログからデジタルに変わる時代に転進なさったのだという。

ナポリで6年通い、修行して、この地で店を開いて35年になる。

最初は、ピッツァ用の小麦粉であるカプートも輸入されておらず、輸入業者と交渉して仕入れてもらったのだという。

やはり小田原さんがいなかったら、日本のピッツァ事情は大きく遅れていただろうな。

まずピッツァの前に、「甘エビ窯焼き」を頼んでみた。

皿の上には、少し焦げ目をつけた大きな甘海老が、放射状に並んでいる。

熱々をつまんで食べた。

これはいけません。

噛んだ瞬間に、香ばしさが爆裂する。

身はしっとりして、甘いエキスを舌に滴らす。

さらには味噌に色気が出て、こちらを誘惑する。

殻もすべて食べられ、1匹食べると急に寂しくなり、もう一匹へと手を伸ばす。

なにか生きている甘海老より生きているような躍動感がある。

さあお次はいよいよピッツアだぞ。

ナポリピッツアの基本マルガリータをいただく。

当時のお姫様マルゲリータのために考案されたという言い伝えがある、ナポリピッツァを代表するものである。

トマト、モッツァレッラチーズ、バジルという三つの構成によるが、特別に岡山吉田牧場のチーズで作ったものをお願いした。

吉田牧場は、日本チーズの創始者と言ってもいい方で、日本中のレストランが熱望するチーズである。

うむ。まず生地が素晴らしい。

片面1〜2分で焼かれたピッツァは、コルニチョーネと呼ばれる縁が盛り上がり、具材が置かれている面の生地も、もっちりとした根性のある食感を見せる。

そしてなにより香ばしく、ずっと噛み締めていたい生地である。

そこにミルクの甘い香りを漂わす吉田牧場のチーズが絡むのだからたまらない。

食べた瞬間に顔は崩れ、無我夢中にさせる力がある。

次に変わり種の「へしこピッツア」といってみた。

へしこ、トマトソース、モッツァレッラ、 オレガノによるピッツァである

食べた瞬間、いきなり日本海にぶち込まれた。

ザブンと波飛沫がかかってくる。

へしこは少しなのに、かなり強固な匂いが襲ってきて、ピッツアを食べているのに燗酒が飲みたくなった。

最後は、カチョカバロをお願いする。

吉田牧場のカチョカバロとフレッシュトマトの組み合わせである。

カチョカバロの上品な旨みがたたみかけ、新鮮なトマトの酸味と抱き合って、これまた生地を運ぶ手が止まらない。

こうして本場のナポリピッツアだけでなく、小田原さんのピッツアには、楽しい工夫がある。

春には春先アスパラやそら豆を使ったピッツアを焼くというし、冬にはせいこガニ三バイ分をのせたピッツアが登場するという。

「それは豪勢ですね」。

そういうと「そうですね、でも毎年赤字です」と、苦笑いされた。

だが嬉しそうである。

おそらくお客さんに喜んでもらうことが一義なのだろう。

そんな小田原さんの笑顔は、底抜けに明るく、素敵である。

ナポリの青い空のように、澄んでいる

帰り際に自分に誓った。

またこの笑顔に会いに来よう。

そして思う存分、ピッツアをいただこう。

お店の場所はこちら

バードランド

〒913-0048

福井県坂井市三国町緑ヶ丘4丁目19-21

TEL:0776-82-5778