「実はスィーツ王国福井」第8弾「源六餅」の巻

掴んだ瞬間、いけないと感じた。
なぜならその餅は、生まれたての赤ちゃんのほっぺより柔らかい。
ふんわりとしたいたいけな食感から、こし餡がスルッと現れて消えていく。
甘みも、この柔らかい餅に合わせたかのように、優しい。
餅とあんこという、どこにでもある簡素な組み合わせながら、食感のバランス、餅の厚さ、あんこの量、甘みなどが、絶妙なバランスで成り立っている。
だから食べた時に、夢のような気分となり、何個でも食べられてしまうのだった。
餅の種類は3種類ある。
食紅を使った桃色と、緑のよもぎ、白いシナモンである
五個550円なり。
シンプルゆえに飽きることなく、近所にいれば毎週買ってしまうだろう。
ならば取り寄せればと思う子もしれないが、この餅は買った瞬間から本質から遠ざかる。
店で買ったら、その場で食べるがベストで、せめて家か宿にそのまま直行して食べなくたはいかないだろう。
この食感が、徐々に失われるからである。
福井県大飯郡高浜町にある「源六餅本舗」は、1924年(大正13年)に創業し、2025年3月現在、創業から101年目を迎える。
扱うものは、源六餅のみと潔い。
毎日毎日、100年間、良質の餅粉を十分に練り上げた、軽く柔らかい餅と餡を組み合わる。
由来は、初代が北海道で江戸献上の和菓子を学び、その技術を受け継いで作り続けてきたという。
さぞかし昔の人は、溶けるような餅の感触に心奪われたことだろう。
いや現代であっても、その夢見心地にさせてくれる餅は希少であり、それは高浜まで足を伸ばす価値がある。
お店の場所はこちら
源六餅本舗
〒919-2229
福井県大飯郡高浜町三明2-56
TEL:0770-72-0022