熊とたこ焼きの関係

西鯖江の駅前に、YouTubeでバズっている店があるという
そう聞いて来てみたら、拍子抜けするほど小さな店であった。
「こんにちわ」と、入ると「いらっしゃい」と、おかみさんの小松キミ子さんが、顔を出された。
バズっているのは「熊丼」だという。
人気ユーチューバーが訪れて動画を上げたら、多くの人が来るようになったということだった。
壁にはずらりとメニューが貼り出されていて、熊丼をはじめ、熊ラーメン、熊そば、猪丼や猪焼肉定食もある。
お好み焼きやたこ焼き、大判焼きもある。
どうやら最初はお好み焼きとたこ焼きの店だったらしいが、ジビエ料理を扱うようになったらしい。
熊肉丼の前に、前菜としてたこ焼きをお願いしたたこ焼きはもっちりしている。
辛味があり、ソースの甘味から解放された、たこ焼きが面白い。
さあそれでは熊といこう
「新商品熊肉丼」と書かれていたので、
「熊肉丼は、新商品なんですか?」と聞いてみた。
「いや、もう数10年やってます」と、お母さん。
十年前の張り紙を、張り替えてなかっただけなのね。
聞けば創業してから30数年やられていて、常連から「たこ焼きばかりじゃあいてまうで。うどん作れや」と言われ、うどんが始まったという。
やがて蕎麦も、ラーメンもやるようになった。
そしてある日、人から熊肉をもらったので、常連と焼いてみたのだという。
するとおいしい。
定番メニューにしようということになり、「熊肉丼」が誕生した。
「熊肉丼1000円」は、熊肉が焼肉のたれのような、甘辛くニンニクを利かせたタレで絡めながら焼いてある。
タレの味の濃さで、ご飯がぐいぐいと進んでしまう
だがさすがは野生である。
育てた肉とは違い、噛んでも、噛んでも、口の中から消えていかない。
何回も噛み、50回くらいでようやく喉元に落ちていった。
噛むうちに味が膨らみ、コーフンする。
この咀嚼回数が、おいしいを生んでいるのだな。
「どんな熊を仕入れているんですか?」そう聞くと、お母さんは答えた。
「この辺によう出てくるでしょ(出てこんて)、あれはダメだけど、山におるやつは植物しか食べておらんから、臭くない」。
熊油という張り紙を見つけて尋ねた。
「熊の油はなんですか?」
「熊の脂よ」。
熊だけに、話が噛み合わない。
「熊の脂は食べんよ。火傷に塗るの」。
裏メニューには、「熊のすき焼き」もあるらしい。
それもいいぞ。今度頼もう。