深く知るともっと面白い!「鯖街道と北前船」の魅力に出会う日帰りツアーに行ってきました!

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全国で唯一、日本遺産プレミアムに登録された「御食国(みけつくに)若狭と鯖街道」。


今回は、2025年2月に開催された日帰りツアー「観光サステナビリティエキスパートと行く!鯖街道の魅力に出会う旅」に参加し、その魅力を体験してきました。

このツアーでは、観光サステナビリティエキスパートとともに、日本遺産に認定された「御食国若狭と鯖街道」の構成文化財を巡り、1500年続く往来の歴史と人々の営みを体感します。

さらに、鯖街道だけでなく、福井各地にゆかりのある北前船の歴史にも触れ、旅の奥深さを味わいました。

深く知るともっと面白い!「鯖街道と北前船」の魅力に出会う日帰りツアーに行ってきました!

いざ若狭おばまへ出発!

  • ツアーは福井駅からバスに乗車
  • 車内では観光サスティナビリティエキスパートの折原さんが挨拶

参加者は福井駅からバスに乗り、若狭・小浜方面へ出発。旅の案内役は、観光サステナビリティエキスパートの折原直廣さんです。


「今日のテーマは、若狭から京都へ食材を届けた『鯖街道』と、京都や大阪から瀬戸内海を越えて北海道まで物資を運んだ『北前船』の文化を感じることです。

若狭・小浜に息づくストーリーを知ることで、それぞれの場所のつながりを楽しみ、歴史の奥行きを感じていただければと思います」と折原さん。期待が高まる中、バスは進んでいきます。

観光サスティナビリリティエキスパート 折原さん


「観光サスティナビリリティエキスパート」とは、個々の観光地を一貫したテーマやストーリーをもとに繋げ、より深い観光体験を提供することを目指す存在です。

それぞれの観光地を独立して楽しむのではなく、テーマにそって光を当てることで、旅がより思い出深いものになるはず。
「添乗員以上、専門家未満」の存在として旅行中すべての行程に同行し、地域との橋渡しを行います!

Column

鯖街道と北前船って何?

小浜は京から最も近い港の一つとして、豊かな海産物を京の食文化に届けてきました。

特に、若狭の海ではかつて大量の鯖が獲れたため、小浜と京都を結ぶ道は「鯖街道」と呼ばれるようになりました。


また、小浜は船を持つ商人が多い土地としても知られ、江戸時代には大阪から瀬戸内海を経由し北海道まで物資を運ぶ「北前船」の寄港地として栄えました。

鉄道が敷かれる以前、北前船で運ばれた物資もまた、鯖街道を通って京都へ運ばれていたといわれています。

鯖街道と北前船って何?

「鯖街道」の起点、鯖街道ミュージアム

  • ミュージアムの前には鯖街道起点の目標が
  • 小浜から京都に運ぶ道中の様子を当時の資料をもとに紹介
  • スタッフの方に鯖街道の歴史を詳しく紹介してもらいました

最初に訪れたのは、若狭湾に面した海のまち、福井県小浜市にある「鯖街道ミュージアム」。日本遺産でもある「鯖街道」の起点となっている施設です。

「鯖街道」の歴史は奈良時代にさかのぼります。

若狭は天皇に食材を供給する「御食国(みけつくに)」であり、平城京の遺跡からは、若狭から朝廷へ送られた「なれずし」の記録も発見され、鯖も運ばれていたそう。

ここでは、鯖街道を通じて食材だけでなく、人や文化が交流してきた歴史を学びました。

「京は遠ても十八里」。つまり京都までおよそ70kmですが、道中にはいくつもの峠越えが必要でした。新鮮な魚介を届けるために、当時は駅伝のように多くの人たちが中継しながら京都まで運んだと言われています。

Column

若狭で獲れた鯖が京都の鯖寿司として大人気に

江戸時代、早朝に水揚げされた鯖は大急ぎで京都まで運ばれました。

しかし鯖は「生き腐れ」と言われるほど痛みやすく、鮮度維持のために一塩して、一晩かけて京都に運ぶことで、ちょうど良い味になったそう。この鯖を使って酢や昆布で締めて作る「鯖寿司」が京都の名物となり、葵祭や祇園祭などのハレの日には、ごちそうとして食べる習慣が残っています。

伝統的な町並みが残る「小浜西組」を散策

  • 中世頃からの町並みがそのまま
  • 細い路地を歩いていると、三味線の音が聞こえてきそう

鯖街道の起点として古くから京都とのつながり、人・物・文化の往来が盛んだった小浜市。

市内には数多くの伝統的な町並みが残されています。


その中でも、「小浜西組」は、丹後街道を中心に商家町・茶屋町・寺町で構成される地域。

国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。


雪が舞う中、ガイドの案内で風情あふれる町を散策しました。

歩いていると、京都の町家を思わせる間口が狭くて奥行きのある「ウナギの寝床」のような建物が多く見られます。小浜市伝統の若狭瓦や火事を防ぐための袖壁(うだつ)、ベンガラ格子などにも注目してみてください。

当時の面影を色濃く残す旧料亭「蓬嶋楼」

  • 明治20年代、茶屋町の中核的な料亭だった「蓬嶋楼」
  • 商売繁盛を願い、伏見稲荷のお稲荷さんが祀られている
  • 現在は土日祝日に一般公開されており、ガイドさんの説明を聞くことが出来ます
  • お座敷には三日月と満月をあしらった壁の意匠が

小浜西組の西端、三丁町にやってきました。


落ち着いた雰囲気で風情を感じるこの場所は、ひとたび足を踏み入れると家を潰すまで遊んでしまうといわれた茶屋町で、北前船で一財産を築いた商人たちの社交場だったそう。


その中でも、歴史的建造物として今もその面影を残す「蓬嶋楼(ほうとうろう)」は、明治から昭和にかけて多くの財界人が訪れた最大級の規模を誇る旧料亭でした。

意匠を凝らした窓や贅を尽くした装飾、調度品が明治時代から変わらぬ姿で残り、当時の繁栄の様子がうかがえます。

建物の中に一歩足を踏み入れると当時の人々の賑わいが脳裏に浮かび、その空気が感じられるような蓬嶋楼。金の大きな屏風、著名な画家の絵、繊細な模様ガラスなど、お客をもてなすための工夫が至るところに残されています。

「酔月」で味わう小浜の恵みが詰まった海鮮丼

  • 明治時代にタイムスリップしたかのような店構え
  • 若狭湾の幸をふんだんに使ったボリュームたっぷりの「浜の宝石箱」
  • お箸はもちろん若狭塗り箸

まちにまった昼食。次にやってきたのは「四季彩館 酔月」です。

もともと明治初期に建てられた料亭を再現した店内では、地元の旬の食材をふんだんに使った懐石料理がいただけます。

こちらの名物の「浜の宝石箱」は、直径30cmの大きな器に真鯛、カンパチ、福井サーモン、サザエ、マダコ、赤海老、焼き鯖寿司など、若狭の海の幸がぎっしり詰め込まれた豪華な海鮮丼。器の大きさに驚き、蓋を開けると色とりどりの魚介が目に飛び込み、視覚でも味覚でも楽しめる一品でした。

まるで明治時代にタイムスリップしたかのような雰囲気のなか、御食国若狭おばまの味覚を楽しむことができます。「浜の宝石箱」はボリュームたっぷりなので、ぜひお腹を空かせて行ってくださいね。

北前船豪商の別邸で、歴史と文化をつなぐ「GOSHOEN」

  • 日本遺産「北前船寄港地・船主集落」の構成文化財に指定される、貴重な文化財でもある「GOSHOEN」
  • 秋田杉など上質な素材を使った和室や縁側にはモダンな北欧チェアが。庭を眺めながらコーヒーを味わえるくつろぎスペースに
  • 「みんなのミュージアム」ではガイドさんから北前船について説明を受けました
  • 伝統工芸「若狭塗」の柄の多彩さにびっくり
  • 月を見るためだけに造られたという2階の特別な「月見の間」

次に訪れたのは「GOSHOEN」。

もともとこの場所は、江戸時代に北前船で名を馳せた商人「古河屋」が藩主などをもてなすために建てた「旧古河屋別邸」で、県指定有形文化財に登録されています。

現在は、小浜の老舗塗箸メーカー「株式会社マツ勘」によって、地域の人々や観光客が気軽に集える場へと生まれ変わっています。


施設内には、若狭の塗箸を販売する「箸蔵まつかん本店」や、コーヒーをはじめ、さまざまなドリンクを提供する「ene COFFEESTAND」があり、園内で好きなドリンクを飲みながらゆったりと過ごすことができます。


また、土蔵を改装した「みんなのミュージアム」では、北前船商人「古河屋」や小浜市の伝統工芸「若狭塗」について分かりやすく展示。ガイドさんの案内により、さらに小浜と北前船の関係について深めることができました。

かつてのおもてなしの場だった「旧古河屋別邸」がまちのコミュニティスペースとして生まれ変わり、小浜と歴史と文化の魅力を伝える場所になっています!古河屋の歴史を知ることで、さらにこの場所が楽しめますよ。

小浜の食文化を体験!鯖の押し寿司を作ってみよう

  • 本物そっくりの料理のレプリカが多数展示
  • 古今東西の雑煮の違いも楽しく学べます
  • 「なれずし」から始まった日本の「すし」についても展示

「御食国若狭おばま食文化館」は、食に関する歴史や文化などが学べるミュージアム。

館内では、ユネスコ無形文化遺産の「和食」、日本遺産の「御食国若狭と鯖街道」などを多くの再現料理レプリカとともに紹介しています。


また、若狭塗箸など伝統工芸体験ができる「若狭工房」や温浴施設「濱の湯」が併設され、地元の人も観光客も楽しめる施設として人気です。

  • まずは鯖の小骨をピンセットで丁寧に取っていきます
  • 木枠に酢飯と鯖を詰めて均一に押し出すと…
  • 鯖寿司の完成です!
  • 竹皮に包んでお土産として持って帰る

こちらでは館内の「キッチンスタジオ」で、「鯖の押し寿司づくり」に挑戦しました!

作り方を伝授してくれたのは、地元の女性たちによる「グループマーメイド」。酢で締めた鯖と酢飯を押し型に詰めて押し出すと、押し寿司の完成!

竹皮に包み、お土産として持ち帰りました。

「御食国若狭おばま食文化館」では鯖の押し寿司のほかにも手まり寿司やでっちようかん、くずまんじゅうなど小浜に伝わる郷土料理の体験ができます。御食国の知恵や工夫をぜひ感じてみてください。

リニューアルした「道の駅 若狭おばま」で買い物タイム

  • 「鯖街道ワンダーランド」をコンセプトにリニューアルした店内
  • さまざまな味が楽しめるサバ缶はお土産にぴったり
  • 若狭おばま地域に古くから伝わる醤油干しは醤油とお酒にさっと漬けて一夜干しにしたもの
  • 300年以上変わらぬ伝統製法を貫く「とば屋」のお酢も人気

2023年にリニューアルし、売り場面積が1.6倍に拡大した「道の駅 若狭おばま」。

「鯖街道ワンダーランド」をコンセプトに、海の幸や地元の特産品が豊富に揃っています。


鯖のぬか漬け「へしこ」や魚のしょうゆ干しといった伝統的な海産品をはじめ、種類豊富な鯖缶、「へしこ」をアンチョビ風に加工した「へしこバーニャカウダ」、300年以上変わらぬ製法で造るお酢など、ご飯にも酒の肴にも持ってこいの商品ばかり。

もちろん、若狭のお酒や若狭塗り箸などの工芸品、道の駅オリジナル商品など小浜を代表する特産品やお土産も充実しています。


参加者も思い思いに買い物を楽しみました。

道の駅若狭おばまには、地元・小浜で生産された30種類以上あるサバ缶が勢揃い!ずらりと天井まで積み重なった様子は壮観です。自分へのお土産はもちろん、贈り物にもおすすめです。

若狭と京都を結ぶ重要な宿場町「熊川宿」

  • 語り部の方とともに熊川の歴史や見どころを散策
  • 最近では昔ながらの町並みを活かしたオシャレなカフェや宿泊施設なども続々と誕生しています
  • 散策していたら木彫り職人さんが作品を見せてくれました
  • 町並みは重要伝統的建造物群保存地区に選定され、往年の繁栄を偲ぶ町並みが保存されています

最後に訪れたのは、若狭町にある鯖街道の宿場町「熊川宿」。

江戸時代初期には物流の要所として問屋が発展し、米や、鉄、魚や塩など京へのさまざまな物資が流通していました。

問屋や番所、奉行所跡やお蔵屋敷跡など当時の風情が色濃く残る街道沿いには、前川(まえがわ)と呼ばれる用水路が流れているのが特徴のひとつ。


この日は用水路にもしっかり雪が積もっていましたが、現在でも野菜を洗ったり、水の流れを利用して里芋の皮をむく芋車(いもぐるま)がかけられたりと、この土地特有の水にちなんだ文化が残っているそうです。


1日かけて鯖街道と北前船のゆかりの地を巡った日帰りツアー。

各地のガイドと観光サスティナビリティエキスパートの折原さんの案内で、若狭小浜の歴史や文化がより深まり、旅の満足度が高まりました。


ツアー旅行には、個人旅行ではできない特別な体験や解説などの魅力があります。参加された方からも「あらためて鯖街道や北前船の歴史をしっかり学べたよい機会になった」などの声をたくさんいただきました。

御食国若狭おばまと鯖街道、北前船を紡いだ歴史や食文化は奥深く、ツアーを通して今の暮らしにも息づいていることを感じていただけたのではないでしょうか。ストーリーやテーマを持って旅する楽しみ方を、これからも福井から広めていきたいと思います!