古い喫茶店で、料理好き店主が作る料理を、朝から楽しむの巻

レトロな喫茶店である。
薄暗い店内には、金の足がついた、深紅のヴェルヴェットの椅子が客を待ち構えていた。
天井にはシャンデリアが輝き、テープルの上では「ビンのコカ・コーラあります」と、「カレーパン熱々❤️サクサク❤️ちょっぴりスパイシー」の文字が踊っていた。
聞けば、もう40数年やられていて、先代は喫茶店とバーをやられていたという。
メニューを開き、すぐに目に入った「大人のお子様ランチ」を、悩むことなく頼む。
すると「オムライスは、ご飯3杯分ありますが大丈夫ですか?」と、聞かれた。
朝9時からの先制パンチである。
朝から受けてたとう。
「はい大丈夫です。お願いします」。
そういうと、女性店主は微笑んだ。
どうやらお一人だけで切り盛りされているらしい。
だがメニューには、ホットサンド、スパゲッティ、丼、カレーなど20数種が並んでいる。
これをお一人で作っているのだからすごい。
さあ、「大人のお子様ランチ」が運ばれた。
オムライスの量が素晴らしい。
皿の上で、威風堂々とそびえ立っていて、とてもお子様が食べられる量ではない。
オムライスの脇には、タコさんウインナー、ソースカツ、エビフライ、鳥の唐揚げ、タルタルソース、サラダの盛り合わせが控えている。
とてもお子様が食べられる量ではない。
ケチャップライスが、ケチャップを使いすぎてなく、味わいのほどがよい。
だから大人なら誰しも、この巨大オムライを難なく食べてしまうだろ
途中で、ソースカツをオムライスにのせ、ボルガライスにしても楽しい。
この「大人のお子様ランチ」に気を良くして、おすすめのカレーパンも頼んでみた。
熱々のカレーパンが登場した。
なにが素晴らしいかといえば、揚げたてであるところである。
全国広いといえど、喫茶店で揚げたてのカレーパンが食べられところを、僕は知らない。
口をあんぐり開ければ、揚げた生地の香ばしさが顔を包む。
あむっと噛めば、もっちりしたパンに歯が包まれ、とろんとカレーが舌に広がった。
最初は甘みを感じ、しばらくしてスパイスの香りと辛味が追いかける。
「カレーパンはいつも揚げたてを提供なさるのですか?」
そう聞くと、女店主はにこりと笑って
「やはり、揚げたてがおいしいでしょ」。
そう答えられた。
お客様には、最上のおいしい物を提供したい。
そう思う店主の心いきが嬉しい。
デザートには、「昔ながらのプリン」三百円を頼んでみた。
すると「カラメルは甘いの苦いのどちらですか? 」と。聞かれた。
二つを用意されているなんて、店主は食いしん坊であり、客本位で商いをなさっているのだな。
苦いカラメルを選んで食べたプリンは、焼き菓子としての意味をなす硬さで、最近のふわふわプリンを蹴散らす力があった。
「ご馳走様です美味しかったです。お1人で、これだけの料理を作られて、大変ですね」。
最後にそういうと
「えへへ」と、嬉しそうに照れ笑いをされるのだった。