畑の中で、自然の恵みをひっそりと噛み締める。

出来れば愛する人と、2人で来たい。
仲睦まじまく笑顔で会話をしながら、料理が運ばれたらしばし黙って、静かに味わいたい。
「Marpe」の料理は、そう思わせる料理だった。
店は、田んぼの真ん中に、ぽつねんとあった。
夜は月明かりの中、入り口の照明だけが輝く。
店は、シェフが一人で切り盛りされていた。
谷橋洋平シェフは、日々山に入り食材を採取し、自家畑で野菜の栽培もする。
そのためだろう。
営業は週二日、火曜日と水曜日のみ。
以前は火曜日だけで、店名も火曜日を意味する店名をつけた。
コースは「イチジクの葉のお茶」から始まった。
次は越前の海水を、一週間かけて塩にしたものを使った「胡瓜とキャベツのピクルス」。
漬物となってもまだ野菜の生命力を感じる。
続いて「バターナッツのケーキ仕立て」が運ばれる。
バターナッツにバターナッツのソース、バターナッツの穏やかな甘さと、添えたムチッとした銀杏の甘さが合う。
次は「上荘の里芋のフラン」ときた。
里芋の味だけをたたせて、余計な味をつけていない。
素の味わい大切にしたシェフの思いが伝わる皿である。
次は「安納芋のタルタル仕立て」が出された。
ローストした安納芋の上に、オレンジ果汁をからめた角切り安納芋が載る。
凝縮し安納芋の味にオレンジの甘酸味がからんで、うっとりとなる。
次は「一週間火を入れ続けた玉ねぎと玉ねぎのソース」。
黒くなるまで煮詰めた玉ねぎは、キャラメル感とは違う穏やかさがある。
玉ねぎの地力を感じる料理であった。
続いて「じゅんけいのつくねとスープと焼き野菜」が出される。
しっかりとした肉質の鶏を、噛みしめる喜びがあり、力強い野菜が呼応する。
滋味豊かなスープとの馴染み方が素晴らしい。
続いてはスープが出された。
「あかやまどり茸のスープ」である。
一口飲んだ途端、茸を丸ごと口の中に突っ込まれたような濃縮感があって、陶然となる。
次は魚料理で、「ホウボウと芹」である。
芹の溌剌とした香りとホウボウの甘みが抱き合う。
大地と海がつながっている実感が湧き上がる。
次は、「万願寺唐辛子と秋茄子のリゾット」が運ばれた。
茄子や黒豆の甘みが染みたご飯の優しさに、万願寺の食感と青々しい香りが抜けていく。
続いて魚料理で「真鯛のロースト」であった。
庭で積んだジャスミンのお茶を添えてある。
全体に淡く、うまみをあえて抑え、食べる側が、味を探しにいく感じが、しみじみとした旨さを募らせる。
最後は肉料理で、「キジ、青い豆乳 木の葉」。
山の淡い淡い滋味が出会う。
互いが澄んだ旨味を持ち、それが溶け合うはかない旨さがある。
キジ特有の白い滋味と豆乳が寄り添い合うのだった。
最後はデザートで、「タルトタタン」。
凝縮したリンゴの甘酸っぱさが、口を満たし豊かん気分となる。
是非好きな人と訪れてほしい。
特別な時間が流れゆく、そう願うレストランである。