福井の冬の風物詩「水ようかん」の起源や特徴とは?
福井の冬の食の代表格といえば水ようかん。全国的には夏に食べる涼菓子として知られていますが、ここ福井県では雪が降る寒い時期に、こたつに入って食べるのが一般的。県外の人が聞けば驚く、福井県民特有の食文化です。
水ようかんの起源
諸説ありますが、江戸時代から約200年続いたとされる丁稚奉公の時代までさかのぼります。年末の帰省時に奉公先から持ち帰った小豆で作ったという説や、持ち帰った羊かんを水で伸ばしてつくり直し、近所に配ったという説などがあります。
また、でっちようかんと呼ばれることもあり、由来は「出汁(でじる)」に、煉る工程を指す「でっちる」の意味が重なった説や、「上りようかん」(蒸し羊羹)の手前の半人前の意味での「丁稚」、「安価なので丁稚が里帰りの時に土産にした」などであると言われています。
水ようかんは庶民のおやつだった
分が多い水ようかんはおせち料理の一つとして食されたり、家庭にある粉末餡と寒天を水で溶かし、アルミの弁当箱やバットに流し入れてお母さんが子供のおやつに作っていたりしたことからも、庶民の身近な存在だったことが分かります。
さらに、餡を使用する餅屋や饅頭屋でも作られるようになり、大きな木枠に流し入れた水ようかんを店頭や自転車の荷台に置いて切り売りして販売していました。子供たちは小銭を握りしめ、食べる分だけを購入していたと言います。その後、木箱から紙箱に流す“一枚流し”販売が主流になっていき、最近ではプラスチック容器も登場。紙箱は県外へのお土産には不向きでしたが、プラスチック容器になったことで持ち運びやすくなり、県外にもファンが増えています。
また、以前は八百屋でも広く販売しており、その名残があるお店では、今でも冬になると水ようかんを販売しています。
福井の水ようかんの特徴
一般的な練りようかんと同じく、砂糖と餡を寒天で固めて作ります。砂糖と寒天の分量を少なくすることで甘味を抑え、のど越し良くあっさりとした味に仕上げています。
主な原料はこしあん、寒天、砂糖とシンプル。使用する砂糖は、上白糖、グラニュー糖、ザラメ糖、黒糖、それらをブレンドするなど店によって異なり、それが水ようかんの色の濃淡や風味、味わいの違いにもつながっています。
また、エリアによっても「水ようかん」「丁稚ようかん」と名前が異なり、風味もそれぞれに特徴があります。福井人に、自分の馴染みの水ようかんがあるのは、生まれ育った場所の味があるからなのです。
水ようかんは福井の冬の風物詩
物心ついた頃から「雪が降り、寒くなったら、暖かいこたつに入りながら冷たい水ようかんを食べる」ことが冬の楽しみだった福井人。家族みんなで一枚流しの水ようかんを切れ目に沿って、付属のヘラですくってそのまま食べる。福井の大家族、人と人とのつながりの中でコミュニケーションツールとして愛されてきました。噛まなくてもすっとほどける口どけ、喉ごしの良さも美味しさの秘密です。
見た目・味・パッケージもお店によってさまざま
ほとんどの水ようかんに付いているヘラ。切れ目に沿って、水ようかんをヘラですくってそのまま食べる。そんな食べ方が当たり前の福井人にとって、ヘラはなくてはならないアイテムです。
そして、福井県内には多数の水ようかんが存在し、甘さや色合い、固さもいろいろ。色合いは、餡の種類や黒糖の配合によって全く異なり、比較してみると縦、横の厚みもさまざま。
パッケージも店舗によって個性があるので、それぞれの特徴をチェックして、お気に入りの水ようかんを見つけてみてください。
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ふく旅ライター記事
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