「若州一滴文庫」は福井県が誇る直木賞作家「水上勉」の文学と世界観に出会える場所
落ち着いた雰囲気の中、のんびりと時間が許す限り文学や芸術に触れてみてはいかがですか。
maruekaho
福井県若狭地方出身のmaruekahoです。
若かりし頃はネオン街に憧れて東京に浮気もしましたが、やっぱり若狭が大好き!という事に気づき帰郷しました。日々カメラの目を通して若狭の風景やお祭りを写し撮っています。
若州一滴文庫とは?
若州一滴文庫は、水上勉氏が生まれ故郷のおおい町岡田に私財を投じて設けた総合文学館で、自身の主催する若州人形座の拠点および、水上氏の蔵書や、水上文学にゆかりの深い作家の絵画などが展示されたアートギャラリーなどがあります。
現在は、「子どもたちに本と出会い、人生や夢を拾ってほしい」という水上氏の想いを受け継いだNPO法人一滴の里が運営を行っています。
「若州一滴文庫」
福井県大飯郡おおい町岡田33-2-1
TEL 0770-2445
営業時間 9:00~17:00
休館日 毎週火曜日(火曜日が祝日の日は翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料 一般 300円
高校生以下 無料
団体(30名以上) 240円
※入館料は、本館の展示室と竹人形館をご覧いただく際に必要です。
※本館ラウンジや図書室(ブンナの部屋)、六角堂、くるま椅子劇場のご利用は無料です。
※帰雁忌(毎年10月の第4土曜日)は、全館無料でご利用いただけます。
四季折々の花々が出迎えてくれる庭園。
入り口を入ると目の前に広がる庭園には四季折々の花が咲き、来館者を出迎えてくれます。
里山の自然を思わせる庭園は、四十年という月日の中で著名な方々や世話をしてくれた方々が作り上げた庭園です。
とても落ち着いた雰囲気で茅葺館の縁側や六角堂からのんびりと眺めるのもオススメです。
また、撮影スポットとしても人気で写真を撮るために庭園を訪れる方も沢山います。
maruekahoは特に春の庭園がお気に入りで、四月頃には可愛いしだれ桜が、五月頃にはなんじゃもんじゃの木やカルミアの花が楽しめます。
※庭園を見るだけなら無料ですので、お気軽にお立ち寄りください。
水上氏の二万冊の蔵書や素敵なアート作品に出会える本館。
庭園を抜けると目の前にある建物が本館で、館内には約二万冊の蔵書がある図書室や、水上文学にゆかりのある作家の絵画作品のギャラリー、受付では書籍や竹紙、ポストカードの販売もあります。一滴文庫の名前の由来となった儀山善来和尚(ぎさんぜんらいおしょう)を中心とする禅僧を顕彰する貴重な資料などの展示も見ることができます。
また一階の展示室では、一年を通してテーマを入れ替えた特別展示も行っています。
maruekahoは、ラウンジに飾られている渡辺淳氏の大きな作品がお気に入りです。
※本館の展示室は、車椅子でも安心して見学していただけるようにスロープを中心とした展示がしてあります。
※展示室をご覧の方は入館料が必要です。
※本館ラウンジ、図書室(ブンナの部屋)のご利用は無料です。
二万冊の蔵書が出迎えてくれる図書室
図書室は本館を入って右側にあり、水上氏の蔵書が約二万冊あります。
貴重な本などもすべて手に取って読むことができます。
窓際の席に座り、ゆったりとした空間で時を忘れて文学の世界に浸ってみませんか。
親子連れに人気のブンナの部屋
「ブンナの部屋」は図書室の奥にある日当たりのよい部屋で窓からは庭園を見渡せ、約2,200冊の児童書があります。
とてもくつろげる空間で子供やお母さんにも人気です。
冬場はコタツも置かれていますので、ゆっくりとできますよ。
水上文学にゆかりの深い作家の作品と水上文学関連資料を見ることができる常設展示。
常設展示は展示室横にあるスロープを上がると、中二階の右側に70以上の水上作品の装丁や挿画を手掛けたおおい町を代表する郷の画家の渡辺淳(わたなべ すなお)氏の絵画が展示してあります。
中二階の左側には、水上氏が「はなれ瞽女おりん(はなれごぜおりん)」執筆にあたり出会った瞽女研究の第一人者で画家の斎藤真一氏の絵画が展示してあります。
さらにスロープを上がると二階に水上文学の関連資料展示があります。
一年を通じて開催される特別展示。
本館一階の展示室では、1年を通してテーマを入れ替えた特別展示が行われています。
この日は、おおい町を代表する画家の渡辺淳氏の作品が展示してありました。
明るさを抑えた展示室に浮かび上がる絵画の数々からいろんな感情が沸き上がります。
独特の世界観に圧倒される竹人形館
竹人形館の一階には、水上氏が主宰する若州人形座の竹人形を展示してあります。
水上作品に登場する人物の竹人形を約60体と、人形の頭を約250点、作品ごとに展示してあります。
二階には、一滴文庫を訪れた作家等の色紙や、水上作品の挿画の原画などが展示されています。
ぜひ竹人形館をご覧いただき、水上文学の世界観を思う存分に楽しんでください。
maruekahoでも知っている著名な作家の皆さんの貴重な色紙を見るのも楽しいです。
※竹人形館は撮影禁止になりますので、館内の雰囲気を写真でお伝えすることはできませんが、竹人形が作り出す水上作品の世界観をぜひお楽しみください。
美しい舞台とくるま椅子劇場
くるま椅子劇場は、若州人形座の拠点として全国で唯一定期公演が行われる劇場で、毎年行われる公演は人気で全国から沢山のファンが集います。
この劇場は、真っ黒な舞台と開口部から見える竹林との相反する光景がとても美しく、四季折々の美しさが楽しめます。
この美しい舞台は、撮影スポットとしても人気です。
また、玄関から劇場までのホワイエはギャラリーとなっています。
この日は、子供が書いた色鮮やかな可愛い絵画が展示してありました。
憩いの場所「六角堂」
六角堂は若州一滴文庫の中央付近にある休憩所で、今では珍しい囲炉裏があり窓の外には庭園の緑が見渡せて、とても落ち着いた雰囲気がお気に入りです。
京都から取り寄せている珈琲豆で入れた美味しい珈琲や、近所で採れるよもぎを使ったよもぎ餅なども楽しめます。
冬場は、薪ストーブの揺らめく炎と温もりが冷えた体を温めてくれます。
※2022年現在はコロナ感染症拡大のために、飲食の提供は休止していました。
茅葺館
茅葺館は各部屋を貸館として利用できるようになっていて、各種研修や体験講座などが行える多目的な交流の場になっています。
縁側の窓は鍵が開いていますので、縁側に座ってのんびりと庭園を眺めることもできます。
オススメの水上作品をご紹介します。
せっかくなので沢山ある水上作品の中からオススメの作品を、学芸員の下森弘之さんにご紹介いただきました。
※ご紹介いただいた作品は、一滴文庫内の図書室で読むこともできます。
今回ご紹介した作品は、本屋やネットで買うことができますので興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。
1.「土を喰らう日々」
下森さんが水上作品からオススメを聞かれたときに年齢問わずオススメするのが「土を喰らう日々」だそうです。
月ごとに紹介された手料理の数々が12の章に分かれて書かれていて、一章ずつ完結しているので読みやすく、どの章から読んでも大丈夫なので日頃から本を読まない方にもオススメです。
人とのかかわりと料理を通して、本当の贅沢とは何かを考えさせられます。
人をもてなす心など今にも伝わる思いが書かれた一冊です。
2022年11月には、沢田研二主演で映画化されました。(タイトル:「土を喰らう十二ヵ月」)
2.「ブンナよ木から降りてこい。」
本館にあるブンナの部屋は、この本の主人公のトノサマガエルのブンナから名付けられています。
児童文学書として母親と子供に向けて書かれた名作で、maruekahoも何度か読んでいる作品です。
大人になって読み返すと、弱肉強食の食物連鎖を通して生きることとはどういう事かを考えさせられました。
生と死の中で、生きることへの執念や人の狡賢さ、そして自分が他者の命を糧に生かされていることを胸に、精いっぱい生きていくことの大切さを教えられました。
巻末に水上氏から母親に向けた言葉「母たちへの一文あとがきにかえて」にて、この作品を通して母親から子供へ伝えてほしい水上氏の想いが託されています。
水上勉氏いわく、水上作品が絶版になっていく中で、「ブンナよ木から降りてこい。」は後世に残るかもしれない一冊であると。
3.水上勉の時代
水上勉の生誕100周年を記念して出版された研究書で、水上勉を知ってもらうには最適な一冊となっていて、水上氏の娘さんのインタビューから水上勉の背景を知ることができます。
水上勉は、同時代の作家の中ではとびぬけて執筆量が多く研究が進んでいませんでしたが、この本の出版に伴い日本近代文学の研究者による研究で、水上勉の功績が見直されています。
水上勉の研究の第一歩になった一冊です。
おおい町内のオススメスポットもご紹介します
若州一滴文庫でのんびり過ごした後は、道の駅うみんぴあ大飯やSEE-SEA-PARKでお食事やお買い物はいかがでしょうか?
道の駅うみんぴあ大飯では、人気の海鮮丼(数量限定)や若狭牛焼き肉丼などが食べられるファーストフードや、いろいろな特産品やお土産、町内でとれた魚介類や野菜などが買えます。
2022年7月に新たにオープンした商業複合施設SEE-SEA-PARKでは、アウトドアショップやカフェなどがあります。
また、SEE-SEA-PARKには観光案内所もありますので、お気軽にお立ち寄りください。
また、ふく旅記事にておおい町の魅力スポットを紹介しています。
ふくいドットコム内のふく旅記事で、おおい町の桜並木やホタル、リゾート気分が味わえるスポットをご紹介していますので観光の参考にしてください。