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旅行の楽しみのひとつが「どんな宿に泊まるか」ということではないでしょうか。

風情と高級感をあわせもつ温泉旅館

素朴で美味しい地元の味が楽しめる民宿

遅くまで飲み歩くことのできるシティホテル

どんな旅行にしたいのかによって、選ぶ宿もさまざまだと思います。

今回はそんな宿での体験を一味違うものにすることができる「地域まるっと体感宿 玉村屋」をご紹介します。

福井県のちょうど真ん中、南越前町今庄宿に位置する古民家をリノベーションした宿で「暮らすように旅をする」体験をどうぞ。

地域まるっと体感宿 玉村屋は、福井県のちょうど真ん中にある南越前町に位置しています。

古くから旅の要所として栄えた「北国街道 今庄宿」の中にある築100年近い古民家をリノベーションした宿です。

そう教えてくれたのは、玉村屋の共同創業者である野村直樹さん。通称ノッチさん。

実は、彼の本業は花農家。普段は菊を中心とした和花を栽培しているとのこと。

玉村屋は移住者である野村さんと、これまた移住者である中谷さんの二人によってつくられました。

中谷さんが地域おこし協力隊として、この町に移住してきたところから話が始まります。

そこで考え出されたのが「地域の暮らしを体感できる宿」をつくるということ。

「地域の人にとっては当たり前の日常でも、外からの人にとっては新鮮で楽しいもの。その素直な感想を地域の人に伝えることで、地域の人が自分の暮らしの価値を再認識してくれるのではないか」と話す中谷さん。地域活性化を仕事とする地域おこし協力隊らしい考え方ではないでしょうか。

4月はチューリップの収穫ができます。

本業は会社員である西川さんが、趣味の一環として始めたチューリップ栽培。「耕作放棄地として荒れていく畑を見ていて、なんとかできないかなと考えていた時にチューリップ栽培と出会いました」と話す西川さん。元々は、自宅裏にある畑の一角で始めたそうですが、今は自宅の周りへと広がっていき、90種類3,000本のチューリップを毎年植えていらっしゃいます。

それまでは趣味で栽培していただけですが、2021年に町内で「道の駅 南えちぜん山海理」ができたことをきっかけにチューリップの販売も開始。販売だけではなく、道の駅の花壇にチューリップを植えるなど、多くの人がチューリップに癒される場所をつくっています。

玉村屋では、そんな西川さんのチューリップ園でチューリップの収穫体験ができます。また、冬前には球根の植え付け体験も。西川さんの「荒れていく畑をなんとかしたい」という素敵な想いを直に聞くこともできます。

続いては、様々な野菜を育てる農家である田中さんのビニールハウスでの野菜の栽培体験。季節それぞれにつくられているのは、トマト・きゅうり・なす・ほうれん草・小松菜など。少ないものを含めると10種類くらいは栽培しているのではないでしょうか。ここでは、収穫はもちろんのこと、収穫までに必要なきゅうりの”葉かき”（不要な葉っぱを切り落としていく作業）など、野菜栽培の様々な場面を体験することができます。

実は、この田中さん。玉村屋の共同創業者である中谷さんがこの町に移住する決め手になった人ということ。80歳を超えていながら、外から訪れる人の話を面白がって聞き、新しいことに毎年チャレンジしていく田中さんとの関わりも、体験の醍醐味です。

南越前町の特産品でもある「花はす」は、仏花としてお盆前に関西を中心に出荷されています。この花はすを育てる井上さんの田んぼでは、出荷時期以外は体験として、花を収穫することができます。なんと、花は取り放題！暑い中ですので体調に気をつけながら、心ゆくまで花をお楽しみください。

「花はすの田んぼは、水を年中入れているので、深くなってしまっていて、田んぼによっては膝上くらいまで水かさがあるんです」と中谷さん。なぜ、こんなに詳しいのか聞いてみたところ、移住した最初の年から、アルバイトとして花はすの収穫に関わっていたとのこと。

盆前の8月初旬にアルバイトも募集していますので、気になった方は問い合わせしてほしいと教えてくれました。

最初の紹介で、本業は花農家だった玉村屋スタッフの野村さん。もちろん、野村さんの花畑での体験も用意されています。メインは菊を育てていますが、それ以外にもシーズンを通して様々な花を育てているので、春から秋まで旬の花の栽培を体験することができるそう。

体験自体も楽しいですが、移住して農家になった野村さんの話は、これから地方移住したいと考えたり、農業に携わることをしたいと思っている方には”生きた情報”になること間違いなし！

体験できるのは農業だけではありません。近年、地方での暮らしや自然と関わることに関心を持っている人たちの間で話題になるのが「狩猟をやりたい」ということ。玉村屋がある南越前町役場で獣害対策の専門家として働いているのが、案内人の坪田さん。

中山間地域での農業で最近問題になっているのが”獣害”です。シカやイノシシなどの動物が農作物を食べてしまったり、田んぼや畑に踏み入って荒らしてしまい、作物をダメにしてしまう被害が広がっています。坪田さんの仕事は、そんなシカを捕獲して農作物への被害を減らすこと。

もちろん、野生動物を捕まえることには賛否両論あるかもしれません。しかし、地方の農村部では野生動物による被害が深刻なのも事実。そんな獣害対策の側面からも狩猟は重要な仕事となっています。この体験はなんと南越前町役場公認で、坪田さんの仕事に同行することができる貴重なものです。

地域の暮らしにおじゃまする体験は、上記で紹介した以外にも、まだまだあるということ。宿を運営するスタッフ自身が、地域に住んでいて地域住民とのつながりがあるため、季節に合わせて様々な体験をできるというのが玉村屋の面白いところかもしれません。

そのほかにも地域の暮らしを体験できるのが「ごはん会」です。その日に泊まってゲスト（宿泊者）とスタッフが一緒になって自炊で夕食をつくります。夕食は「できる限り、地元の食材を使っている」ということですので、福井の家庭の味を楽しみたい方には良いかもしれません。

タイミングが合えば、スタッフだけではなく、地元住民も参加するというのが珍しいポイント。その地域で暮らしている人たちとの交流では、地方での暮らしをはじめ、様々な価値観に出会うことができ「人生を変えるきっかけになった」と話すゲストもいたということ。

地域の人たちと関わったら、またこの場所に「帰りたくなる」きっかけになりますね。

玉村屋では、泊まるゲストのスケジュールや旅の目的に合わせた３つの宿泊プランを準備しているということ。どのプランでも簡単な朝ごはん付き。

・ごはん会プラン

宿泊に夕食のごはん会がついたプラン。福井県内ので観光地めぐりで利用するのにおすすめ。自炊が始まる18時までにチェックインすれば良いので、近隣のスポットを十分にめぐることができます。

【宿泊料金】

3名1室 おひとり 7,500円

2名1室 おひとり 8,000円

1名1室 おひとり 9,500円

・ごはん会＋選べる体験プラン

このプランには、３つから選べるちょこっと体験がついてきます。他に予定もあるけれど、せっかく玉村屋に泊まるのであれば1〜2時間だけの簡単な地域体験をしてみたい方におすすめ。時間帯もチェックイン前やチェックイン後が選べるので、ご自身の予定に合わせてお選びください。

【選べる体験】

・今庄宿まちあるき

・田舎道サイクリングツアー

・農家さん探訪ツアー

【宿泊料金】

3名1室 おひとり 11,300円
2名1室 おひとり 12,250円
1名1室 おひとり 15,000円

・ごはん会＋選べるDeeply体験プラン

最後にご紹介するのがその名の通り、地域での深い体験ができるプラン。ここまででご紹介した収穫体験や狩猟体験を希望される場合、このプランを選んでくださいということ。選べる体験は季節様々、そしてゲストの興味に合わせて提案していただけるということですので、参加してみたい体験がある方は時期を問い合わせてみてはいかがでしょうか。

【宿泊料金】

3名1室 おひとり 14,300円

2名1室 おひとり 15,250円

1名1室 おひとり 18,000円

他の宿とは少し違うのが「素泊まりプラン」がない点。「当宿の魅力を感じてもらうには素泊まりだと難しいので、素泊まりはお受けしていません」ということ。ここも徹底した地域への想いが込められています。

※価格は全て税込表示。各プランの料金は2025年2月現在。最新の料金は公式WEBサイトでご確認ください。

福井県には多種多様な宿がありますので、それぞれの旅のスタイルや目的に合わせて選ぶことができます。

いつものように温泉旅館やホテルを選ぶのも良いかもしれませんが、せっかく福井に来るのであれば、地域を体験してみるのも面白いのではないでしょうか。

玉村屋は一見、ゲストハウスのような雰囲気ですが、ゲストハウスのような相部屋（ドミトリー）ではなく、全室個室。「ゲストハウスは、ドミトリーありきではなく、交流を楽しめる場所なので、相部屋は苦手という方でも交流を楽しんでほしいと考えています」と話すところにも気配りが感じられました。