大河ドラマで大注目の「浮世絵」とは?江戸時代の福井の姿も…!?
突然ですが皆さん大河ドラマ、見ていますか?
今年の大河ドラマは江戸のメディア王と言われる蔦屋重三郎が主人公の「べらぼう」。
去年に引き続き、戦が登場しない稀有なドラマになっています。
ドラマの中で版元(出版会社)を大きくするためにメインになってくるのが「浮世絵」。
今回は浮世絵がどういうものか、その概要と江戸時代に浮世絵に描かれた福井の姿を追っていきたいと思います!

加治 まや
歴史旅が大好きな福井県地域おこし協力隊。福井県内の史跡や歴史イベントのレポートをお送りします
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浮世=いま?「浮世」絵ってなんだ?
そもそも「浮世」の絵とはどういう意味でしょう?
「浮世」とは当時の言葉で「今」「享楽的なこの世」というようなニュアンスで使われていました。江戸時代の人々にとっての「いま」を描いたのが浮世絵だったんですね。このように、当時の人々の暮らしを描いた絵のことを風俗画と言います。ちなみに、西洋では「真珠の首飾りの少女」の作者のフェルメールなどが風俗画家として有名です。
浮世絵の表現の仕方
菱川師宣「見返り美人」
一般的に浮世絵とは、私たちも小学生の時の図工で体験したことのある、木版画の技法で一枚の紙に摺られたものを指すことが多いものです。この記事でも版画の浮世絵の話をメインでお話ししていきます。しかし、当時描かれた「風俗画」はなにも版画だけではありませんでした。そもそも絵というのは筆で描かれることが多いもの。当時の人々を筆で描いたものも「肉筆浮世絵」として浮世絵に分類されます。
筆で描くということは、“一点もの”ということ。何枚も摺ることのできる版画の浮世絵とは違い特定の人だけが手に入れられる高価なものだったでしょう。
有名なものだと菱川師宣の「見返り美人」も肉筆浮世絵に分類されます。髪型や着物の柄など当時の女性のファッションが詳しく読み取れる一枚になっていますよね。
あなたはどんなタイプの浮世絵がお好き?
一口に浮世絵といってもそのジャンルは様々。
ジャンル別にご紹介していきましょう。
綺麗な女性は好きですか?|美人画
喜多川歌麿「合わせ鏡のお久」都立中央図書館所蔵
まず浮世絵と言ってみなさんが思い浮かべるのは、上でも挙げたように女性を描いた美人画ではないでしょうか?時には町娘、時には吉原の遊女など当時を生きた多種多様な女性が描かれています。日常生活を営む姿、芸能人のブロマイドのようにこちらを見つめる姿、観光広告のように有名な場所に佇む姿。現代でも私たちがSNSで様々なポートレートを楽しむように江戸の人々も楽しんでいたのではないでしょうか?
役者は男性だけだった?|役者絵
歌川国貞「盛遠 海老蔵」「けさ御せん 岩井杜若」「仁木弾正 松本幸四郎」「伊津の次郎 市川高麗蔵」都立中央図書館所蔵
当時の市井の人々が夢中になっていたのが歌舞伎。そんな歌舞伎で役を演じている役者はスターでした。大好きな俳優さんの姿を手元に置いておきたいのは今も昔も変わりませんよね。
こちらの浮世絵は4人の役者を1枚の中に描いたものですが、一人女性姿の役者もいますね。この時代の歌舞伎はすでに女性が出演することは禁じられていたのでここに描かれているのは女形と呼ばれる男性が演じた女性役なのです。
歴史の中のかっこいいキャラを描く!|武者絵
歌川国芳 「太平記英勇伝 千場田修理進辰家 柴田勝家」都立中央図書館私も日本史が好きで歴史漫画などをよく読むのですが、その中でかっこよく描かれているキャラクター好きになってしまうことがよくあります。当時もそんな、江戸時代より前に活躍した武将を描いたシリーズ物の浮世絵などがありました。その武将の物語に重点を置いたものは「物語絵」などとも呼ばれます。
こちらは福井にも馴染みの深い柴田勝家を描いたもの。文章の最後の方に「北庄」の文字が見て取れますね。
王道ジャンル|風景画・名所
美人画の次にみなさんが浮世絵として思い浮かべるのは、葛飾北斎の「富嶽三十六景」や歌川広重の「東海道五十三次」シリーズを始めとした風景を描いたものではないでしょうか?これは各々の地方の名所を描いたことから「名所絵」と呼ばれることも。
このジャンルはいまでいうポストカード的な立ち位置。江戸の人が地方の風景を知ったり、江戸に旅行に来た人が江戸土産として買って行ったり。SNSもテレビもない時代に行ったことのない場所に思いを馳せる手段が浮世絵だったのでしょうね!私は広重の風景画の中に描かれている人が可愛くて大好きです。
こちらの作品では後ろの風景画シルエットで表現されていて、それが粋な感じがしませんか?
人間みたいな動物!?|擬人画
歌川国芳「流行猫の戯 道行猫柳婬月影」都立中央図書館所蔵 現代の漫画やアニメでは動物が人間のように喋ったり行動したりする作品が数多く存在しますよね。実は江戸時代の浮世絵にも動物を人間のように表現している作品があるんです。
こちらの作品は、当時禁止されていた役者絵を猫の姿で表現することで出版できたというもの。なんだか一休さんのトンチみたいで面白いですよね。
この他にも細分化すると様々な浮世絵の種類があります。是非調べて、自分の好みのジャンルを見つけて見てくださいね!
江戸時代の福井も浮世絵に描かれていた!?
それではここからは当時の福井がどう描かれていたのか見ていきましょう!
こちらはなんと!葛飾北斎の描いた福井の様子。
全国の様々な橋を描いた「諸国名橋奇覧」シリーズに登場した九十九橋の様子です。九十九橋は福井市内の足羽川に架かっている橋です。
橋の向こうには越前の名産、和紙を干している風景が。どうやら実際は、九十九橋のあたりでは和紙の生産していなかったようなので北斎が越前っぽいものも描いとこ、と描き込んだのかもしれませんね(笑)
昔は半分が木で半分が石でできていたという珍しい橋でした。福井市立郷土博物館に復元したものが展示してあるのでぜひ訪れて見比べてみてくださいね。
三國湊
こちらは当時北前船の寄港地として賑わっていた三國湊の様子。
こうして現在の姿と見比べてみると、どことなく面影が残っている気がしませんか?
東尋坊
歌川広重(二代)「諸国六十八景 越前等仭坊」福井県立美術館蔵
こちらは現在も福井の名所として有名な東尋坊の様子。
似てるような似てないような…?笑
どのような資料を元に広重がこの絵を描いたのか気になりますね。
敦賀
歌川広重(初代)「六十余州名所図絵 越前 敦賀気比ノ松原」福井県立美術館蔵
こちらは敦賀の港。敦賀も三國と並んで北前船の寄港地として有名でした。また、現在でも日本三大松原の一つに数えられる気比松原が描かれているのも特徴的ですね!
なんとなく、湾の形が似ているような気がしますね。
若狭湾
歌川広重(二代)「諸国名所百景 若狭かれゐを制す」福井県立美術館蔵
こちらの絵は、当時から若狭の名物だった鰈を欲している場面を若狭湾をバックにして描いています。土地と名物をセットにして表現する手法は今でもよくありますよね!
木の後ろにいるわんちゃんも可愛いですね。
いかがでしたか?
浮世絵は美しいだけではなく当時の生活や人々のセンスを知るのにも適したアート作品です。ぜひ、皆さんも様々な視点で浮世絵を楽しんでみてくださいね!